「勉強ができない子」と感じる場合、その背景にはさまざまな要因があるかもしれません。大切なのは、その子が本当に「できない」のか、「やり方が合っていない」のか、「モチベーションが低い」のかを見極めることです。
勉強が苦手な子の特徴
■ 勉強が苦手な子によく見られる特徴
- 集中力が続かない
- 数分で気が散ってしまう
- 始めてもすぐに他のことに興味が移る
→ 学習時間を短く区切る工夫をしていない。(例:タイマーで10分ずつ)
- 提出物の忘れ物が多い
- 宿題や持ち物の管理が苦手
- 言われたことをすぐ忘れる
→ 視覚的なスケジュールやチェックリストを作成しない。
- 同じミスを繰り返す
- 注意されても直らない
- 理解が浅いまま進んでいる
→ その都度「どうして間違ったのか」を一緒に振り返る時間を取らない。
- 勉強に対してネガティブな言葉が多い
- 「どうせ無理」「つまんない」「できない」
- 自信がなくあきらめ癖がついている
→ 小さな成功体験を積ませ、自信をつけさせることをしていない。
- 勉強の方法がわからない
- 「とりあえず教科書を読む」だけで終わる
- 効果的なやり方を知らない
→ 「どうすれば覚えやすいか」「どこに注目すればいいか」を一緒に考えていない。
- 家庭や学校の環境に課題がある
- 落ち着いて学べる場所がない
- 家庭での会話が少ない
- プレッシャーが強い
→ 学力向上の土台、安心して学べる「心の居場所」がない。
■大切なのは「できない理由」に目を向けること、ただ「勉強できない」と決めつけるのではなく、「なぜ今そうなっているのか?」を丁寧に探ることが成長への第一歩です。また、子供が勉強しない理由は一つではなく、いくつかの要因が絡み合っていることが多いです。以下に代表的な理由を挙げてみました。
目的や動機が見えていない
「なぜ勉強するのか」が本人にとって明確でないと、やる気が起きにくいものです。将来の目標が漠然としていると、目の前の勉強がほんとに意味のあるものなのか悩んでしまいます。
成功体験の不足
「やってもできない」「どうせ無理」と思っていると、自信を失い、勉強への抵抗感が生まれます。小さな成功体験を積み重ねることが大切です。
学習環境の問題
家庭や学校の環境が集中しにくかったり、騒がしかったりすると、自然とやる気がそがれます。また、スマホやゲームなどの誘惑が強い場合もあります。
勉強の仕方がわからない
やる気はあるけど「どう勉強したらよいかわからない」子もいます。勉強法やスケジュールの立て方を教えてあげることで改善することがあります。
精神的・身体的な不調
ストレスや不安、睡眠不足などが影響して、集中力や意欲が下がっていることもあります。心と体の健康を整えることも重要です。
■ なぜ目的や動機が見えないのか?
将来のイメージが持てない
小学生〜中学生の段階では、「将来の仕事」や「人生設計」がまだぼんやりしていて、勉強とのつながりが見えにくいです。
親や先生の「やりなさい」が動機になっている
外からのプレッシャーだけで動こうとすると、「自分ごと」として捉えにくくなります。
成果を感じられない
勉強してもすぐに結果が出ないため、「やっても意味がない」と感じてしまうことも。
■ どうすれば「目的」や「動機」を持てるようになるか?
1. 興味・関心から広げる
たとえば、「ゲームが好き」なら「どうやってゲームは作られているのか」「プログラミングって何?」といった方向に繋げられます。
2. 将来について一緒に話す
「どんなことが好き?」「将来どんな生活をしたい?」といった会話を重ねることで、勉強の必要性が見えてくることがあります。
3. 短期的な目標を立てる
「このテストで80点を目指す」「漢字を10個覚える」など、すぐに達成できる目標を設定すると、やる気が出やすくなります。
4. ロールモデルを見せる
親や兄姉、またはテレビや本に出てくる「憧れの人」が「勉強していたから今がある」ということを知ると、自然と意味を感じることがあります。
■ 成功体験が不足するとどうなるか?
「成功体験の不足」は、子どもが勉強に対して自信を持てなくなり、やる気を失ってしまう大きな要因です。特に、何度やっても「できない」「怒られる」ばかりだと、「どうせ無理」「やってもムダ」と思ってしまいます。自信を失い挑戦を避け間違えることを極端に恐れるようになります。勉強=苦痛なものという認識になりやすく、自分の能力を他人と比べて、落ち込むことが増えます。
■ 成功体験を積ませるには?
1. 「できた!」を小さく積み重ねる
最初から難しいことをさせるのではなく、簡単にできることや、少しがんばればできるレベルの課題から始めましょう。
→ 例:「毎日10分だけ」「漢字を3つだけ」など。
2. 具体的にほめる
「えらいね」だけでなく、「昨日よりスラスラ読めたね」「この字きれいに書けてるね」など、成果を言葉で見える化すると達成感が強まります。
3. 「前よりできた」に注目する
他人と比べるのではなく、「昨日の自分と比べてどうか」を一緒に見てあげましょう。
→ 小さな成長に気づかせることが、自信の土台になります。
4. テストよりも「過程」を評価する
結果だけでなく、「きちんと取り組んだ」「自分で机に向かった」など、努力そのものを認めることが大切です。
5. 得意なことから始める
もし算数が苦手なら、得意な図工や音楽、運動などから「成功体験」の感覚を育てることも有効です。
成功体験が積み重なると、子どもは「勉強って自分でもできるかも」と思えるようになり、自ら進んで学ぼうとするようになります。
■ よくある学習環境の問題と改善方法
子どもが勉強しない理由の一つに、「学習環境の問題」があります。これは、物理的な空間の問題だけでなく、心理的な安心感や生活リズムも含まれます。環境が整っていないと、どれだけ本人にやる気があっても集中できません。
1.勉強する場所が落ち着かない
テレビやスマホの音、家族の話し声が気になる
→ 静かなスペースを確保するか、ノイズキャンセリングイヤホンを使うのも手です。
2.机の上が散らかっている
勉強以外の道具があると気が散ります
→ 使うものだけを出して、終わったら片づける習慣を。
3.スマホ・ゲームの誘惑
勉強中に通知が来ると集中が切れます
→ タイマーを使って「この時間だけはスマホを別の部屋に置く」などルールづくりが効果的です。
4.生活リズムが乱れている
寝不足や疲労が集中力を妨げます
→ 睡眠・食事・運動のバランスを整えることで、自然と学習への意欲が回復します。
5.家族との関係や雰囲気
怒られる・比べられるなどのプレッシャーが強いと、家で勉強するのが苦痛になります
→ 否定よりも、「見守り」と「励まし」のスタンスが理想的です。
■ 環境を整えるちょっとした工夫
- 勉強タイムを毎日決める → 習慣化しやすい
- 照明や椅子を見直す → 快適さが集中力に直結
「勉強応援グッズ」やタイマーの活用 → 子どもが前向きになれる工夫を学習環境を整えることで、「やる気がない」のではなく「集中できなかっただけだった」と気づくケースも多くあります。
子どもが勉強しない理由の中でも、「精神的・身体的な不調」は見過ごされがちですが、非常に重要なポイントです。やる気がないように見えても、心や体が疲れている・不調である場合、勉強に集中するのはとても難しくなります。
■ 精神的な不調のサイン
- 学校や塾の話を避ける
- 勉強や宿題になると急に機嫌が悪くなる
- 「どうせ無理」「ぼくなんて」と自信を失っている
- イライラしやすくなっている
これらは、ストレス・不安・自己肯定感の低下などが背景にあることが多いです。
■ 身体的な不調のサイン
- 寝不足や疲れで集中力が続かない
- 食欲がない、頭痛や腹痛が多い
- ゲーム・スマホに依存気味で昼夜逆転している
身体のリズムが乱れると、脳の働きにも影響し、やる気や思考力が大きく落ちます。
■ 親としてできるサポート
1.まずは「勉強」より「心身の回復」を優先
無理に勉強させるのではなく、安心できる環境を整えましょう。休息や睡眠をしっかりとることで、自然と気力が戻る場合もあります。
2.「大丈夫だよ」と伝える関わり方
「なぜやらないの?」ではなく、
→「最近つかれてる?」「無理しなくていいよ」など、共感ベースの声かけを。
3.学校生活や人間関係をさりげなく聞く
いじめや友人関係の悩みがあると、勉強どころではなくなります。急がず少しずつ話を引き出しましょう。
4.生活リズムを整える
- 早寝・早起きの習慣をつける
- 朝ごはんをしっかり食べる
- スマホ・ゲームの使用時間を決める
5.必要なら専門家に相談を
学校のカウンセラーや児童精神科などに相談することも、親子にとって大きな支えになります。
■ 「勉強できない=怠けている」ではない
お子さん自身も「勉強しなきゃ…」というプレッシャーに苦しんでいることがあります。まずは勉強以前の問題に気づいてあげることが、子どもの心を守る大切な一歩です。
■ 暗記力アップのための具体的な方法
お子さんの暗記力を高めるためには、年齢や性格に合わせた工夫が大切です。以下に、効果的な方法をいくつかご紹介します。
1.繰り返し学習(反復)
暗記の基本は「くり返し」です。1日後、3日後、1週間後と、間隔を空けて何度も復習すると記憶が定着します。
(エビングハウスの忘却曲線に基づく)
2.声に出す・書く
視覚だけでなく、聴覚(声に出す)や運動感覚(書く)を使うことで脳への刺激が増え、記憶に残りやすくなります。
3.「覚えるもの」を絞る
一度に多くを詰め込むより、少しずつ覚えるのがコツ。1回の学習で覚える量は10~20個程度が理想。
4.意味づけ・イメージ化
ただの言葉の羅列ではなく、意味やイメージを持たせることで記憶が強化されます。
例:「イギリスは産業革命が始まった国」→ 工場の絵と一緒に覚える
5.クイズ形式にする
ゲーム感覚で楽しく学ぶと集中力もアップ。おうちで「一問一答クイズ」を出してあげるのも効果的です。
6.五感を使う(マルチモーダル学習)
読む・書く・話す・聞く・見るを組み合わせて記憶する。
例:英単語を「書く」「読み上げる」「音声で聞く」など。
7.十分な睡眠・食事・運動
記憶は睡眠中に整理・定着されます。脳の働きを高めるには、朝ごはん・適度な運動も大切。
エビングハウスの忘却曲線とは?
以下のようなデータが有名です(あくまで目安)
時間が経ってからの復習なし 記憶の残り具合(おぼえている割合)
20分後 約58%
1時間後 約44%
1日後 約33%
1週間後 約23%
1か月後 約21%
➡ つまり、「何もしなければ、1日後には7割近く忘れる」ということです。
忘却を防ぐには「タイミングよく復習」
エビングハウスは同時に、「繰り返し復習すれば記憶はどんどん長く保たれる」ことも示しました。
効果的な復習タイミングの一例:
1回目:当日(すぐ)
2回目:翌日
3回目:3日後
4回目:1週間後
5回目:2週間後~1か月後
➡ このように**「忘れる前に復習する」**ことで、記憶は強く定着します。
子ども向けの使い方例(簡単)
- ノートを見返すのは「翌日」と「1週間後」が特におすすめ。
- 単語カードなどは「今日・明日・週末・テスト前」と数回使う。
- 忘却曲線をカレンダーに書いて、復習の予定を立てるのも◎。
人の記憶は、時間とともに自然に消えていく。でも、くり返し復習すれば、長く覚えていられる。
「エビングハウスの忘却曲線」は、効果的な復習タイミングを教えてくれるヒントです。